役者絵
うたがわちかしげ さく「せつげつかのうちつき」 歌川周重 作「雪月花乃内月」 - 刀剣ワールド

本役者絵は、「中村芝翫」(なかむらしかん)演じる「武蔵坊弁慶」(むさしぼうべんけい)と、「尾上菊五郎」(おのえきくごろう)演じる「牛若丸」(うしわかまる:のちの「源義経」)が五条大橋で出会ったという伝説を題材にした作品です。
舞台となった五条大橋は、現在の京都府京都市にあります。画面右の人物が武蔵坊弁慶。太刀を佩き、薙刀を持って牛若丸に斬りかかりますが、軽やかに躱(かわ)されてしまいます。返り討ちに遭った武蔵坊弁慶は、その後牛若丸の家来になったと伝えられています。
タイトルの「雪月花」(せつげつか)は、自然の美しいものを指す言葉で、冬の雪・秋の月・春の桜のこと。浮世絵の画題や、茶道における茶式(茶の点て方や作法)の名前にも取り入れられています。
作者の「歌川周重」(うたがわちかしげ)は明治時代の浮世絵師。本名は守川音次郎で、別号に「喜蝶斎」(きちょうさい)などがあります。「豊原国周」(とよはらくにちか)の門人で、役者絵を多く手がけました。
■コラム 浮世絵に描かれた刀剣
武蔵坊弁慶所持の刀剣は、「三条宗近」作の薙刀「岩融」(いわとおし)であるという伝説があります。これは、刃だけで 3尺5寸(約106㎝)あった大薙刀ですが、本作に描かれている薙刀は一般的な長さ(約60~90㎝)です。