戦争絵
やまざきとしのぶ さく「さどわらじょうしんげきのず」 山崎年信 作「佐土原城進撃之図」

本合戦浮世絵は、薩摩軍が佐渡原城(現在の宮崎県宮崎市)へ進撃した様子を伝える1枚です。実は、このときにはすでに、明治政府軍が圧倒的に優勢でした。それにもかかわらず、本合戦浮世絵では西郷隆盛を中心に、「逸見十郎太」(へみじゅうろうた:戊辰戦争で活躍。西南戦争では薩摩3番大隊1番小隊長)や「有馬藤太」(ありまとうた:戊辰戦争で活躍。近藤勇を降伏させ助命を願ったことで有名)といった薩摩軍勢の戦う姿が、まるで勝っているかのように、勢い良く生き生きと描かれています。このことから当時の人は、薩摩軍に関心が高く、同情的だったと想像することができるのです。
本合戦浮世絵を描いた「山崎年信」(やまざきとしのぶ)は、「月岡芳年」(つきおかよしとし)に入門し、天才と呼ばれ、水野年方、稲野年恒、右田年英と共に「芳年四天王」のひとりにも選ばれた人物。1877年(明治10年)に、「西南戦争」(せいなんせんそう:「西郷隆盛」率いる薩摩軍と明治政府軍の戦い)を題材とした錦絵30点をタイムリーに描き、ブームを起こしました。