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ようしゅうちかのぶ さく「ひよしまる おのえきくごろうほか」 楊洲周延 作「日吉丸 尾上菊五郎他」 /ホームメイト

本役者浮世絵は、「絵本太閤記」(えほんたいこうき)を題材とした歌舞伎の「矢矧日吉月弓張」(やはぎのひよしつきのゆみはり)を描いた作品です。幼少の「日吉丸」(ひよしまる:のちの[豊臣秀吉])と、のちにその配下となる盗賊の頭領「蜂須賀小六」(はちすかころく)が、矢作橋(現在の愛知県岡崎市)で出会ったという逸話をもとにしています。
配役は、中央の日吉丸役を「尾上菊五郎」(おのえきくごろう)、右端の蜂須賀小六役が「市川團十郎」(いちかわだんじゅうろう)。そして左端の野武士のひとり「夏森繁蔵」(なつもりしげぞう)役を「中村寿三郎」(なかむらじゅさぶろう)、同じく野武士の「青山新八」(あおやましんぱち)を「市川八百蔵」(いちかわやおぞう)が演じました。本役者浮世絵は、槍(やり)を手に襲いかかろうとする蜂須賀小六らと、着物の腕をまくり対抗しようとする日吉丸による緊迫感ある場面となっています。
作者は、江戸時代末期から大正時代にかけて活動した浮世絵師「楊洲周延」(ようしゅうちかのぶ)です。若い頃は、武者絵や戦争絵、風俗画などを描き「江戸浮世絵の再来」と称され大変な人気を博します。そのあと、晩年となる大正時代初期頃には、女性の洋装流行に伴いロングドレスを身にまとう令嬢の錦絵を描き、女性からの支持を集めました。
■蜂須賀家の刀剣
豊臣秀吉に仕えてからの蜂須賀氏(はちすかし)は、戦にて数多の戦功を挙げ、のちの徳川幕府でも大大名としての地位を確立します。多くの美術品を所有した蜂須賀氏ですが、なかでも名刀と名高いのが打刀「蜂須賀虎徹」(はちすかこてつ)です。江戸時代に最上大業物(さいじょうおおわざもの)に列せられるほどの斬れ味を誇った「長曽祢虎徹」(ながそねこてつ)によって作られました。