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うたがわとよくに さく「さとみはっけんでん ぎょうとくいりえのば」 歌川豊国(三代) 作「里見八犬伝 行徳入江の場」 /ホームメイト

本役者浮世絵は、「歌川豊国(三代)」(うたがわとよくに)が、1852年(嘉永5年)に「江戸市村座」で上演された歌舞伎「南総里見八犬伝」(なんそうさとみはっけんでん)の一場面を描いた作品です。南総里見八犬伝は、「曲亭馬琴」(きょくていばきん)が記した長編伝記小説で、歌舞伎でも大いに人気を博しました。
物語の主人公、犬塚志乃(いぬづかしの)と犬飼源八(いぬかいげんぱち)は、「芳流閣」における激闘ののち、行徳川に落ち、気を失ったまま入江に流れ着きます。2人は、犬田小文吾(いぬたこぶんご)に助けられ、その父の古那屋文五兵衛(こなやぶんごべえ)が営む宿で匿われるのです。
この作品は、「邪を退け、妖を治める」とされる宝剣「村雨」を携えた犬塚志乃と勇壮な甲冑(鎧兜)姿の犬飼源八が、古那屋文五兵衛の舟で古那屋へ向かう場面。葦の茂みから犬田小文吾と敵対関係にある山林房八(やまばやしふさはち)が覗き見ています。3枚続き絵ならではの構図や、今にも動き出しそうな舟、鮮やかな衣装など、歌川豊国(三代)らしさ溢れる1枚です。
作者は、「歌川国貞」(うたがわくにさだ)を名乗ったあと、初代「歌川豊国」が亡くなると、歌川豊国(三代)を襲名。役者絵と美人画を得意とし、現代にも通じる洗練されたデザインと鮮やかな色彩、丁寧な描写で一世を風靡しました。1864年(元治元年)に79歳で亡くなるまで、10,000点を超える作品を残しており、今後改めて再評価されるべき巨匠のひとりと言われています。