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ようしゅうちかのぶ さく「たけのいっせつじらいやふじはしのば」 楊洲周延 作「竹の一節 児雷也 藤橋乃場」 /ホームメイト

本役者浮世絵において、向かって右側で刀に手を掛けているのは、江戸時代後期に出版された合巻(ごうかん:絵入り娯楽本の一種)の「児雷也豪傑譚」(じらいやごうけつものがたり)に登場する架空の忍者「児雷也/自来也」(じらいや)です。明治時代以降、浮世絵のみならず、浄瑠璃や歌舞伎などの演目において、題材として多く取り上げられています。
本役者浮世絵で描かれているのは、同物語の中で最も有名な「藤橋乃場」と称される一場面。 中央で狼の頭を被り、弓を手にしている「高砂由美之助」(たかさごゆみのすけ)と、左側で火縄銃を持つ山賊「夜叉五郎」(やしゃごろう)に藤橋の上で出会った児雷也が、今にも戦おうとする「三すくみ」の様子が描かれています。狂言や歌舞伎で演じられる場合には、「藤橋のだんまり」とも呼ばれ、いちばんの見どころとなる名場面です。
作者である「楊洲周延」(ようしゅうちかのぶ)は、約45年にも亘る長い作画期を持っており、明治時代に活躍した浮世絵師の中でも、特に多くの作品を残したことで知られています。「歌川国芳」(うたがわくによし)や「歌川豊国(三代)」(うたがわとよくに)、「豊原国周」(とよはらくにちか)といった歌川派の名だたる浮世絵師達に師事していました。