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うたがわちかしげ さく「ひらいやすまさ いちかわだんじゅうろうほか」 歌川周重 作「平井保昌 市川團十郎他」 /ホームメイト

本役者浮世絵に描かれているのは、「市原野[いちはらの]のだんまり」の場面。「だんまり」(暗闘もしくは暗桃と書く)とは歌舞伎演出のひとつで、暗闇のなか無言で探り合いながら争う場面を指します。
本役者浮世絵では、平安時代中期の貴族である平井保昌(ひらいやすまさ)を市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)、袴垂保輔(はかまだれやすすけ)を中村芝翫(なかむらしかん)、鬼童丸(きどうまる)を尾上多賀之丞(おのえたがのじょう)が演じています。
「市原野のだんまり」では、盗賊の袴垂保輔が、朧月夜に笛を吹きながら歩いていた貴族・平井保昌の着物を奪おうとするのですが、不思議と恐怖を覚えます。試しに足音を立てて走り寄ったり、刀を抜いて襲い掛かろうとしたりするも結局上手くいかず、そうこうしているうちに平井保昌から「一緒に来い」と言われて従います。一緒に行くと、平井保昌の家に着きました。平井保昌は袴垂保輔に着物を与え、愚行を繰り返さないよう教え諭すのです。
歌舞伎では、袴垂保輔と鬼童丸(市原野に出現した鬼。酒吞童子の息子とも言われる)が融合し、「袴垂、実は鬼童丸」という役までも生まれています。
本役者浮世絵の作者は、守川周重(もりかわちかしげ)。明治時代に活躍した浮世絵師です。豊原国周(とよはらくにちか)の弟子で、号は喜蝶斎、喜蝶楼、一梅斎、一梅楼。3枚続の役者絵や小説の挿絵などを描いています。