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とよはらくにちか さく「かぶきざしんきょうげん くまがいじんやば」 豊原国周 作「歌舞伎座新狂言 熊谷陣屋場」 /ホームメイト

本役者浮世絵に描かれているのは、歌舞伎「一谷嫩軍記」(いちのたにふたばぐんき)の「熊谷陣屋」(くまがいじんや)の場面。平安時代末期の源平合戦を舞台にしています。
本役者浮世絵では、源義経(みなもとよしつね)の家臣である熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)を市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)、平敦盛(たいらのあつもり)の母親である藤の方(ふじのかた)を尾上榮三郞(おのええいざぶろう)、弥陀六(みだろく)を尾上菊五郎(おのえきくごろう)、源義経を中村福助(なかむらふくすけ)、熊谷次郎直実の妻・相模(さがみ)を坂東秀調(ばんどうしゅうちょう)が演じています。市川團十郎は、「熊谷陣屋」の「團十郎型」を創出した九代目と思われるため、舞台は明治時代です。
「熊谷陣屋」では、熊谷次郎直実が源義経より命を受けます。敵軍である平敦盛を助けよとの命でした。実は、平敦盛の本当の父親は後白河法皇なので、天皇家の血筋を守るため、源義経が命じたのです。
熊谷次郎直実は、平敦盛を救うために自分の息子・小次郎を身代わりにします。それを知った藤の方と相模は騒然となりますが、平敦盛の首を実検(身元の判定)した源義経は、別人であると知りながら平敦盛の首であると断言するのです。そして、鎧櫃(よろいびつ)に隠れていた本当の平敦盛は、石屋の弥陀六に託されました。
本役者浮世絵の作者は、豊原国周(とよはらくにちか)。歌川国貞(うたがわくにさだ)の弟子で幕末から明治時代にかけて活躍した浮世絵師です。「役者絵の国周」として知られるほど、役者絵を得意としました。
■コラム
熊谷次郎直実と源義経が、諸撮巻(もろつまみまき)糸巻柄(つか)の太刀を佩刀(はいとう)している様子が見受けられます。