- 役者絵
- 役者絵とは
とよはらくにちか さく「かぶきざしんきょうげん いちのたにふたばぐんき
すまうらのだん」
豊原国周 作「歌舞伎座新狂言 一谷嫩軍記
須磨浦の段」 /ホームメイト

本役者浮世絵の題材となったのは、歌舞伎「一谷嫩軍記」(いちのたにふたばぐんき)のうち、「須磨浦の段」(すまうらのだん)です。 「一谷嫩軍記」は、全5段からなる浄瑠璃で、「平家物語」(鎌倉時代の平家一門の興亡を描いた軍記物語)を脚色して作られました。のちに歌舞伎化され、人気の演目となっています。
本役者浮世絵で描かれたのは、「一ノ谷の戦い」において、平家方の武将「平敦盛」(たいらのあつもり)と源氏方の武将「熊谷直実」(くまがいなおざね)が対峙する場面。一の谷の戦いは「源平合戦」(1180~1185年にかけて行われた源氏と平氏の戦い)のひとつで、須磨浦(現在の兵庫県神戸市)が舞台となりました。
画面手前の黒い馬に乗っているのが、「市川團十郎」(いちかわだんじゅうろう)演じる熊谷直実です。日本刀を佩き、右手には日の丸が描かれた軍扇を持っています。一方、白い馬に乗っているのが「尾上菊五郎」(おのえきくごろう)演じる平敦盛。当時まだ十代の若き武士です。
作者の「豊原国周」(とよはらくにちか)は幕末から明治時代にかけて活躍した浮世絵師。「豊原周信」(とよはらちかのぶ)、「歌川豊国(三代)」(うたがわとよくに)らに師事しました。役者絵に優れ、多くの作品を残しています。
■コラム 「平家物語」と刀剣
本浮世絵の題材となった「平家物語」の「剣の巻」(つるぎのまき)には、「髭切」と「膝丸」に関するエピソードが記されています。どちらも「源満仲」(みなもとのみつなか)が作らせたと伝わる名刀です。