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とよはらくにちか さく「さんぜんりょうはつにのふじなり」 豊原国周 作「三千両初荷末松」 /ホームメイト

本役者絵は、1880年(明治13年)に上演された、通称「馬切り」(うまきり)と呼ばれる歌舞伎の一場面です。
画面中央で勇ましく見得を切っているのが、主人公「織田信孝」(おだのぶたか)を演じる関西の花形役者「中村宗十郎」(なかむらそうじゅうろう)。そのまわりには、6人の捕手(警察)が刀剣を抜いて取り囲み、中村宗十郎は八方塞がりであるはずなのにどこか余裕の表情を見せています。
「馬切り」は、歌舞伎作家「辰岡万作」が書いた「けいせい青陽」の1幕。織田信長の三男・織田信孝は、豊臣秀吉が天下人となったことに不満を抱き、世間に背を向けて生活は荒れ、お金にも困るようになるのです。そんなとき、豊臣秀吉の祠堂金(しどうきん:祠堂を建設するために寺に寄進するお金)3,000両が馬で運ばれることを聞き、それを襲って金を奪う計画を思いつきます。大勢の捕手が捕まえようとしましたが、犯人はあの織田信孝だと聞いて平伏し、織田信孝は堂々と大金を奪って逃げるという物語。でたらめすぎるお話ですが、中村宗十郎の人気と重なり、これが痛快と好評でした。
本浮世絵を描いたのは、「豊原国周」(とよはらくにちか)。「歌川国貞(初代)」(3代歌川豊国)、「豊原周信」(とよはらちかのぶ)に師事し、役者絵、役者大首絵に優れ、歌舞伎界を盛り上げました。
■織田信孝の刀剣「鎬藤四郎」
織田信孝の刀剣で有名なのが、粟田口吉光が作刀した短刀「鎬藤四郎」(しのぎとうしろう)です。これは、1581年(天正9年)に「織田信長」が、愛する長男・織田信忠に「正宗」、次男・織田信雄に「北野藤四郎吉光」、3男・織田信孝に「鎬藤四郎」を与えたうちの1振。しかし、織田信孝はこの刀剣をあっさり兄・織田信雄にプレゼント。その織田信雄は、この刀剣を北条氏直に贈り、黒田如水、豊臣秀次、伊達政宗、徳川家光へと引き継がれましたが、1657年(明暦3年)「明暦の大火」にて焼失しました。