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ようしゅうちかのぶ さく「あずまにしきちゅうやくらべ さかのうえのたむらまろ」 楊洲周延 作「東錦昼夜競 坂ノ上田村麿」 /ホームメイト

本武将浮世絵は、平安時代初期に「征夷大将軍」(せいいたいしょうぐん)として活躍した武将「坂上田村麻呂」(さかのうえのたむらまろ)が、鈴鹿峠(三重県と滋賀県の境にある峠)にのさばる山賊一味を退治した伝承が題材になっています。
画面右の武将が坂上田村麻呂、画面左の女性は坂上田村麻呂の討伐を助けたとされる伝説上の人物で、この討伐を伝える多くの物語に、鈴鹿山の天女「鈴鹿御前」(すずかごぜん)や、鈴鹿峠の女盗賊「立烏帽子」(たてえぼし)として登場する美女です。
また、坂上田村麻呂の腰にあるのは、愛刀「騒速」(そはや)だと考えられ、わずかに反りのある大刀(たち/だいとう:長尺の直刀)だったとされる騒速の特徴をよく捉えています。
本武者浮世絵は、歴史的場面や妖怪譚を描いたシリーズ「東錦昼夜競」(あずまにしきちゅうやくらべ)の1点で、昼夜競とは1枚の絵の中に昼と夜の場面を描き分けているという意味です。本武将浮世絵も、画面の上に坂上田村麻呂が山賊を成敗する昼の場面、画面の下に鈴鹿御前または立烏帽子が坂上田村麻呂を招き入れている夜の場面を描いて、物語性を高めています。
本武将浮世絵の作者「楊洲周延」(ようしゅうちかのぶ)は武家出身で、若き日に武者絵を得意とした「歌川国芳」(うたがわくによし)に師事し、明治時代になると浮世絵師に転じて、躍動感のある戦争絵や役者絵、歴史画、美人画などを数多く制作しました。
■浮世絵に描かれた刀剣
京都市の鞍馬寺が所蔵する「黒漆剣」(こくしつけん/くろうるしのつるぎ)は、坂上田村麻呂が奉納した愛刀と伝わります。刃長76.7cmの直刀で、柄(つか)、鞘(さや)ともに黒漆塗りであることから、この名で呼ばれるようになりました。
