- 行列浮世絵
うたがわくにさと さく「とうとにほんばしわかどのぎょうれつず」 歌川国郷 作「東都日本橋若殿行列図」 /ホームメイト

本行列浮世絵は、一見すると江戸の日本橋を大名行列がわたる場面を題材にしたと思われます。しかし、人物の背丈は橋の欄干と同じかそれより低いくらい。髪型も成人のちょんまげではなく、大部分を剃り上げて一部を残したスタイルです。実は、本画中の人物は大人ではなく子供ばかりで、髪型も江戸時代当時の幼児がしていたものなのです。
子供達による大名行列を描いた本作品のように、テーマにかかわる舞台や人物を直接表現せず、例えば武士を女性や子供に代えて描いた浮世絵は、「見立絵」(みたてえ)や「やつし絵」と呼ばれるジャンルに属します。見立絵にはパロディや謎解きの性質も含まれ、日本や中国の古典、故事、物語を、江戸時代当時の風俗でもって表現し、観る者に真意を問いかける物が多く残るのです。特に、初期の「錦絵」(にしきえ)で活躍した「鈴木春信」(すずきはるのぶ)は、見立絵ややつし絵を多く手掛けています。
本行列浮世絵の作者「歌川国郷」(うたがわくにさと)は、幕末期に活動した歌川派浮世絵師のひとり。「歌川国貞」(うたがわくにさだ)の門人で、様々な分野の浮世絵を制作しました。本行列浮世絵に良く似た題名の「東都日本橋行列図」も発表していますが、こちらは大名行列を若い女性達に置き換えて描いた物です。