- 妖怪浮世絵
おがたげっこう さく「かごしまけんじゅさんじょうせいかみまきたばこいってはんばい」 尾形月耕 作「鹿児島県授産場製紙巻煙草一手販売」 /ホームメイト

本妖怪浮世絵は、鳥居の上で天狗が一服しているユーモラスな絵です。明治時代に紙巻煙草の販売促進用に作られたものと考えられています。
団扇絵にする企画だったものの、企画がなくなり絵だけが残っている状態。本来なら団扇になり消費されますが、本妖怪浮世絵のように現存しているのは大変珍しいことです。
煙草が日本に伝来したのは天正年間(1573~1592年)だとされ、江戸時代を通じて庶民の間で喫煙の習慣が定着。さらに江戸時代末期になり、ペリー来航と共に欧米の文化が流入してくると、日本人は「紙巻煙草」と出会います。それまでは「刻み煙草」を「煙管」(きせる)で吸っていましたが、すでに紙に巻いてある煙草は革新的だったのです。紙巻煙草は利便性が高く瞬く間に一大ブームを引き起こしました。
本妖怪浮世絵は、明治時代から大正時代に活躍した浮世絵師「尾形月耕」(おがたげっこう)の作品。尾形月耕は独学で絵を学び、下積み時代は「絵ビラ」と呼ばれる広告や、陶磁器の下絵を描いて腕を磨きました。1881年(明治14年)頃からは、新聞や小説の挿絵を手掛けるようになり、ようやく人気画家の仲間入りを果たします。そのあとも、「月耕随筆」や「源氏五十四帖」を出版し、晩年まで人気が衰えることはありませんでした。
■天狗とは
天狗と言えば、赤い顔に高い鼻、高下駄を履いて手には羽団扇(はねうちわ)を持っているというのが一般的。天狗は神や妖怪に類するものとして、民間では古くから信仰されていました。
