- 妖怪浮世絵
うたがわくによし さく「ほんちょうむしゃかがみ よごしょうぐんたいらのこれもち」 歌川国芳 作「本朝武者鏡 余吾将軍平惟茂」 /ホームメイト

本武将浮世絵(武者絵)は、「紅葉伝説」という伝説をテーマに描かれています。主人公「平惟茂」(たいらのこれもち)が、鬼女「紅葉」(もみじ)と戦っている場面。醜く恐ろしい鬼女の顔に反して、夜空に舞い散る紅葉の葉色が映え、平惟茂の衣装も美しい1枚です。
平惟茂は、平安時代中期の武将。939年(天慶2年)「平将門の乱」にて「平将門」を討った「平貞盛」の養子。15番目の養子だったことから「余吾の君」と呼ばれ、のちに鎮守府将軍となり「余吾将軍」と呼ばれました。
「今昔物語」(平安時代末期の説話集)でも、豪族・藤原氏との合戦場面が記されるなど、武勇にたいへん優れた人物。そこで平惟茂は、冷泉天皇の勅命を受けて、鬼女が出るという信濃国(現在の長野県)戸隠村に、退治しに行くのです。
平惟茂が手にしているのは、八幡大菩薩より授かったという破邪の刀剣。平家重代の太刀「小烏丸」であるとする説もあります。平惟茂は、この刀剣で鬼女を斬り、無事に退治。のちにこの話が伝わり、明治時代には「紅葉狩り」という名前で「能」や「歌舞伎」が演じられ、人気を博しました。
本武将浮世絵(武者絵)を描いたのは、「武者絵の国芳」と呼ばれた「歌川国芳」(うたがわくによし)です。1855年(安政2年)に描かれた「本朝武者鏡」シリーズの中の1枚で、現在12作品が確認されました。実は弟子の「歌川芳艶」(うたがわよしつや)も、1856年(安政3年)に同じく本朝武者鏡という題でシリーズを描いています。
