- 妖怪浮世絵
うたがわくによし さく「ひごのくにみずまたのかいじょうにて
ためともなんぷうにあう」
歌川国芳 作「肥後国水俣の海上にて
為朝難風に遇う」 /ホームメイト

本武将浮世絵は、江戸時代後期の文化から天保年間頃に制作された絵図で、「滝沢馬琴」(たきざわばきん)の読本「椿説弓張月」(ちんせつゆみはりづき)の挿絵として描かれた一場面。
椿説弓張月とは、軍記物語「保元物語」をもとに、「保元の乱」にて「崇徳天皇」に付き、敗れた「源鎮西八郎為朝」(みなもとのちんぜいはちろうためとも:以下[源為朝]と表記)が全国を漂泊し、琉球王国(現在の沖縄県)の首長となるまでを記した伝奇小説です。
歴史上、保元の乱後に伊豆大島へと流された源為朝は、その地で亡くなりました。しかし伝説によると、源為朝は伊豆大島を脱出し、諸国を遍歴したと伝えられています。
本絵図は、雁回山(がんかいさん:熊本県熊本市)に潜んだ源為朝が「平清盛」を討伐するため水俣湾より出帆し、台風に遭遇したところ。源為朝の正室「白縫姫」(しらぬいひめ)が、嵐を鎮めるために生贄となって海へと飛び込み、左には鰐鮫、中央には龍、右には源為朝を救おうとする天狗が描かれた、劇的な一場面です。
作者の「歌川国芳」(うたがわくによし)は、初代「歌川豊国」(うたがわとよくに)の門人として学び、江戸時代末期を代表する浮世絵師のひとりとなりました。歌川国芳は、「武者絵の国芳」と呼ばれるほど、武者絵で特に人気を博し、洋画風を取り入れた風景画を描くなど、新しい作風も取り入れています。