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つきおかよしとし さく「かんじんちょう」 月岡芳年 作「勧進帳 明治12年」 /ホームメイト

本役者浮世絵は、歌舞伎十八番のひとつで、「勧進帳」(かんじんちょう)の一場面を描いています。9代目「市川団十郎/團十郎」(いちかわだんじゅうろう)が演じる「武蔵坊弁慶」(むさしぼうべんけい)の迫力ある姿が印象的です。袖から見える刀の柄も太く豪壮で、武蔵坊弁慶らしさを感じさせます。
兄の「源頼朝」(みなもとのよりとも)に追われることとなった「源義経」(みなもとのよしつね)が京から逃れて東北へ向かう道中のこと。重臣の武蔵坊弁慶が山伏(やまぶし:仏教の修行者)に変装し、源義経はその荷物持ちとして関所を通ろうとしますが、関守の「富樫左衛門」(とがしのさえもん)に身分を疑われてしまいます。そのとき、武蔵坊弁慶の機転で窮地を切り抜けるのが「勧進帳」の見せ場です。
のちに、富樫左衛門が源義経一行の宿を訪れ、疑ったことを詫びて酒を勧めます。この情景を市川団十郎が「関守に 酒ふるまわむ やまさくら」という俳句に詠みました。本役者浮世絵の右上にこの俳句が表され、市川団十郎の俳号である「團洲」(だんしゅう)の署名も見えます。このことから、市川団十郎自ら作者の「月岡芳年」(つきおかよしとし)に制作を依頼した作品ではないかと考えられているのです。
浮世絵師の「月岡芳年」は、幕末から明治時代初期にかけて、大変な人気を博しました。本役者浮世絵は、1879年(明治12年)に「大蘇芳年」(たいそよしとし)の号で発表されています。