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つきおかよしとし さく「わかんひゃくものがたり にっきだんじょうなおのり」 月岡芳年 作「和漢百物語 仁木弾正直則」 /ホームメイト

本役者浮世絵に描かれているのは、歌舞伎「伽蘿先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)の一場面です。伽蘿先代萩は、1660年から1671年にかけて仙台藩伊達家で起きたお家騒動を、室町時代の足利家(あしかがけ)におきかえて脚本が書かれています。
第3代仙台藩主・伊達綱宗(だてつなむね:劇中では足利頼兼)は遊郭通いを理由に幕府から隠居を命じられ、2歳の伊達綱村(だてつなむら)が第4代仙台藩主となります。それは実は、綱村の後見人である伊達宗勝(だてむねかつ:劇中では大江鬼貫)と家老・原田甲斐(はらだかい:劇中では仁木弾正直則)が藩の権力を掌握するための陰謀でした。
本役者浮世絵の詞書(ことばがき)によると、雨の夜、仁木弾正(=原田甲斐)がネズミに化けて、幼君・伊達綱村の寝室に忍び込み、悪だくみの証拠である巻物を盗み出しますが、忠臣・荒獅子男之助が不審なネズミを見つけて鉄の扇で抑え込みます。辛うじて逃げたネズミは仁木弾正の姿に戻るのですが、本役者浮世絵に描かれているのはまさにこの場面です。
仁木弾正は歌舞伎役者・5代目松本幸四郎の当り役であったため、仁木弾正の裃(かみしも)は高麗屋の四つ花紋(よつはなびしもん)であることが定例となっています。また、その後悪事が露呈した仁木弾正は刃傷沙汰を起こしますが、その場面では白襦袢に刀の下げ緒を襷掛けにした衣装が定番です。
本役者浮世絵を描いたのは、幕末から明治時代に活躍した月岡芳年(つきおかよしとし)。画号は一魁斎芳年(いっかいさいよしとし)。歌川国芳(うたがわくによし)の弟子で「最後の浮世絵師」と呼ばれています。「血みどろ絵」「無惨絵」で有名ですが、後年は大蘇芳年(たいそよしとし)と号し、歴史画や新聞の挿絵など多様に展開しました。
