- 皇族浮世絵
つきおかよしとし さく「だいにほんしりゃくずえ ゆうりゃくてんのう」 月岡芳年 作「大日本史略図会 雄略天皇」 /ホームメイト

本皇族浮世絵は、「日本書紀」に記された「雄略天皇」(ゆうりゃくてんのう)の逸話を題材としています。
雄略天皇が猪狩りに出向いたときのこと。獲物の猪が暴れ出し、人々が逃げ惑うなか、雄略天皇の側に仕える舎人(とねり:皇族や貴族に仕え、警備や雑務に従事した者)のひとりが、恐怖のあまり木に登ってしまいました。
雄略天皇は、その舎人に向かって猪を弓で射て止めを刺すよう命じますが、舎人は恐れおののいたまま動けません。雄略天皇は、自ら弓を引いて猪を射止めると、脚を振り上げて猪を蹴り殺したのです。そして、命令に従わなかった舎人を斬ろうとしました。
そのとき、同行していた皇后が舎人を哀れに思い、雄略天皇に対して「陛下が狩りを好むのは結構ですが、趣味のために舎人を斬るならば、その行為は獣(けもの)と変わりないのではありませんか」と進言します。
雄略天皇は、皇后の言葉を聞き入れて舎人を許し、「楽しきかな。人は狩りで獣を得るが、朕(ちん)は狩りをして良い助言を得た」と語りました。
作者の「月岡芳年」(つきおかよしとし)は、本皇族浮世絵を1879年(明治12年)に制作。人の背丈よりも大きな猪を、雄略天皇が蹴り上げ、ひっくり返している大胆な構図から、月岡芳年の類稀な才覚が窺えます。