大阪府大阪市にある「大阪浮世絵美術館」(おおさかうきよえびじゅつかん)は、浮世絵版画に特化した美術館です。大阪の中心地・心斎橋筋商店街の中にあり、立地・利便が抜群。大阪浮世絵美術館の概要や見どころについて、詳しくご紹介します。
大阪浮世絵美術館は、2019年(令和元年)に開館した浮世絵版画専門の美術館です。浮世絵師として人気の高い「歌川広重」(うたがわひろしげ)、「葛飾北斎」(かつしかほくさい)、「喜多川歌麿」(きたがわうたまろ)などの作品を中心に、約300枚もの浮世絵を所蔵しています。
好評なのが、半年ごとに変わる企画展です。「葛飾北斎祭」など、テーマが明確で分かりやすいのはもちろんのこと、大阪浮世絵美術館ならではのプラスアルファの工夫がなされていて、おもしろいと評判。
例えば、「旅行」をテーマとした企画展「北斎・広重 浮世絵と巡る日本の名所」では、数々の名所絵を紹介しているのとともに、絵の中にある現在も続く名店・名物についての情報をパネルで紹介。さらに作品一覧表と、名店・名物の現在の名称、店舗住所、QRコードが記載された、お持ち帰り用のリーフレットをいただくことができます。これは、スタッフのアイデア。こんな美術館があったら良いなという思いを取り入れて、どんどん実現しています。
大阪浮世絵美術館の外観
立地は大阪の中心地、心斎橋筋商店街の中にあり、アクセスも抜群。
ビルの3階、ワンフロアの半分が展示室、半分がミュージアムショップとなっています。
ミュージアムショップは入場料無料。通勤、通学、ショッピングのついでに、ふらっと何度も訪れたくなる、小粋な美術館です。
大阪浮世絵美術館に行ったらぜひ観賞して欲しい、いちばんおすすめの浮世絵を、スタッフの「山本伊津子」(やまもといつこ)さんにうかがいました。
歌川広重 作「江戸名所百景 浅草金龍山」
山本伊津子さんと浅草金龍山
「大阪浮世絵美術館でぜひ観て欲しいのは、歌川広重が晩年に描いたシリーズ絵、江戸名所百景の中のひとつ浅草金龍山[あさくさきんりゅうざん]です」と山本伊津子さん。
浅草金龍山とは、浅草寺(せんそうじ:現在の東京都台東区浅草)のこと。
浅草寺の創設は、628年(推古36年)。金鱗の龍が降りてきたという伝説があることから、金龍山(きんりゅうざん)という山号が付けられています。
東京都で最も古いお寺として有名で、現在も総門に「雷門」と書かれた赤い大提灯が掲げられ、浅草のシンボルとなっています。この絵が描かれた当時は「志ん橋」と書かれていたため、大きく書かれた「橋」の文字が読めるのです。
空摺・雪に注目
空摺・足跡に注目
近像型の構図
山本伊津子さんのおすすめポイントは、大きく2つ。
「まず、素晴らしいのが、近像型と呼ばれる歌川広重独特の構図です。門と提灯を手前に描き、本堂までの距離が強調されていて素敵。さらに素晴らしいのが建物の朱色に対比して映える、白い雪の部分です。これは、和紙の白色を活かした「空摺」(からずり)という技法が施されているんですよ」
スタッフの山本伊津子さん
空摺とは、和紙に凹凸を付ける摺の技法で、現在で言うエンボス加工のような物。本堂の屋根や木々に積もる雪は和紙そのものの色を活かし、空摺で凹凸を付けることによって、やわらかい雪の質感や立体感を表現しています。
「空摺はルーペで観ると、凹凸しているのがよく分かります。雪道を歩く人々の足元にできる足跡も空摺がされていて、とっても繊細。いつまでも見とれてしまいます。空摺などの特殊な技法を観ることができるのは、本物の浮世絵である証拠。ぜひ自分の目で発見して、楽しんで下さい」
ルーペで観てみよう
受け付けでルーペを無料で借りることができます。
ルーペで浮世絵を観てみると、人物の細やかな表情はもちろん、絵の中の文字、着物の柄、波のしぶきなど、版画の高度な技術をくまなく確認することができます。
なかには、浮世絵師の暗号みたいな物も。ルーペで観なければ分からない、肉眼だけでは気付くことができなかった新たな発見を楽しめます。
大阪浮世絵美術館は、展示方法も工夫されています。例えば、ガラスケースに飾られた浮世絵に関しては、「ぜひ肘をついて鑑賞してみて下さい」とのこと。
今回、展示されていたのは、葛飾北斎が制作した「富嶽三十六景 五百らかん寺さざゐどう」の浮世絵。これは、五百羅漢寺(ごひゃくらかんじ:現在の東京都)から、皆で富士山を眺めているという浮世絵です。肘をつくことで、この浮世絵に描かれた人物達と一緒に、富士山を眺める感覚を味わうことができます。
ミュージアムショップ
ミュージアムショップでは、実際に江戸・明治時代当時に刷られたオリジナルの浮世絵版画や大阪浮世絵美術館が所蔵する歌川広重、葛飾北斎、喜多川歌麿などの浮世絵が描かれた「版画レプリカ」が販売されています。
サイズは大版、間版、中版、小判と4種類あり、インテリアに合わせて、壁掛け用、卓上用など、好みの絵を選ぶことができます。他にもポストカードやクリアファイル、メモ帳、付箋、てぬぐいなどのグッズが充実。
浮世絵に描かれた「猫」を集めた猫グッズや、浮世絵に関する様々な書籍など、他にはない珍しい貴重なグッズを手に入れられます。
大阪浮世絵美術館の施設情報 | |
---|---|
施設名 | 大阪浮世絵美術館 |
所在地 | 〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-2-23 不二家心斎橋ビル 3F |
電話番号 | 06-4256-1311 |
交通アクセス | 大阪メトロ長堀鶴見緑地線「心斎橋駅」6号出口 徒歩5分 各線「なんば駅」徒歩7分 |
開館時間 | 10~17時(最終入館16時30分) |
休館日 | 月曜日(祝祭日の場合は開館)、年末年始 |
駐車場 | なし |
入場料 | 大人 1,000円 学生(学生証提示) 600円 小学生 300円 |
公式サイト | https://osaka-ukiyoe-museum.com/ |