- 行列浮世絵
うたがわひろしげ さく「おんなぎょうれつ おおいがわのず」 歌川広重 作「女行列 大井川の図」 /ホームメイト

本名所浮世絵は、東海道島田宿と金谷宿(現在の静岡県島田市周辺)の間にある大井川を渡る、女性達を描いた作品です。大井川は水の勢いが強いことから橋を架けることができず、川渡しを生業とする川越人足らが旅人を運んでいました。「箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川」と馬子唄に歌われるように、大井川は東海道最大の難所であり、増水のため川を渡れなくなると、旅人は水が引くのを数日待つことがあったと言います。
川の渡し方にも種類がありました。「肩車」や、神輿のような「連台渡し」、丸太に掴まる「棒渡し」。そして士分以上の身分だけに許可された乗馬のまま渡る「馬越し」などがありました。また川渡しの料金は、毎朝役人が水の深さと川幅を測って決定し、高札場(こうさつば:法令などを記す掲示板)に掲げていたと言います。
本名所浮世絵は、上流階級と思われる女性達の優雅な旅の姿が描かれています。大判三枚続の大画面に広がる大井川と、背後には富士や小高い山々が並ぶ姿は迫力満点です。
本名所浮世絵は、日本各地の名所を描いた名所絵(めいしょえ)で一躍名を馳せた「歌川広重」(うたがわひろしげ)による作品。歌川広重と言えば「東海道五十三次」が最も有名ですが、この作品が大成功を収めたことで多くの版元(はんもと:出版社)から制作依頼が舞い込みました。これら東海道五十三次を主題にした膨大な作品は、現在では狂歌入、行書版、隷書版など絵の内容によって通称で呼び分けられます。
■旅人が護身用にした刀剣
街道の整備が行き届いた江戸時代、伊勢参りなどが流行したことで庶民も旅行に出かけるようになりました。そんな旅行時には、庶民でも護身用に脇差などを常時身に付けることを許されていたのです。