つきおかよしとし さく「すえひろごじゅうさんつぎみつけ」 月岡芳年 作「末広五十三次見附」 ／ホームメイト

1865年（慶応元年）、徳川14代将軍「徳川家茂」（とくがわいえもち）は上洛を行い、その後「大坂城」（現在の大阪城）へ入って「第二次長州征伐」の指揮を執ることになりました。この上洛を題材とした浮世絵が、「末広五十三次」（すえひろごじゅうさんつぎ）または「末広五十三駅図絵」（すえひろごじゅうさんえきずえ）と呼ばれるシリーズ物です。8人の浮世絵師の手により、55枚からなる合本が制作されました。

本行列浮世絵に描かれたのは、「見附宿」（現在の静岡県磐田市見付）の西にある天竜川です。馬印（うまじるし：大将の所在を示す目印）を手にした武士の見つめる先には、水面を行く舟のシルエットが浮かび、幻想的な雰囲気を漂わせています。この武士の陣羽織に描かれた家紋は「笹竜胆」。当時は徳川将軍を浮世絵にすることは禁止されていたため、徳川家茂一行を「源頼朝」（みなもとのよりとも）一行に置き換えて表現しているのです。

本行列浮世絵の作者である「月岡芳年」（つきおかよしとし）は、幕末から明治時代中期にかけて活躍しました。武者絵や合戦絵をはじめ、歴史絵、美人画、役者絵など多種多様な浮世絵を制作。どの分野でも独創的な画風を見せる浮世絵師であり、現代でも高い人気を誇っています。

■見付（見附）に伝わる「太刀 銘 成高」
見附宿のあった静岡県磐田市見付には、鎌倉時代初期に備前国（現在の岡山県東南部）を拠点とした刀工「成高」（なりたか）の太刀が伝来。成高は、弓の名手「那須与一」（なすのよいち）の刀剣を鍛えたことでも知られる名工です。静岡県内に伝わる鎌倉時代初期の刀剣は希少であり、「太刀 銘 成高」は県指定の文化財となっています。