- 浮世絵
つきおかよしとし さく「つきのひゃくし かいまみのつき かほよ」 月岡芳年 作「月百姿 垣間見の月 かほよ」 /ホームメイト

本美人浮世絵は、江戸時代に流行した歌舞伎の演目「仮名手本忠臣蔵」の場面を描いた作品。この仮名手本忠臣蔵とは、1701年(元禄14年)に「江戸城」(現在の東京都千代田区)にて、「浅野内匠頭」(あさのたくみのかみ)が「吉良上野介」(きらこうずけのすけ)を斬り付けた「元禄赤穂事件」がもととなっています。しかし、歌舞伎にする上で史実をそのまま演目とすることは幕府批判に繋がりかねないことから、南北朝時代が舞台の軍記物語「太平記」に仮託して仕立て上げました。
本浮世絵左端にいる男性が、太平記に登場する武将「高師直」(こうのもろなお)に置き換えた吉良上野介です。中央の女性は、同じく太平記に登場する武将「塩谷判官」の妻「かほよ」。塩谷判官は浅野内匠頭に見立てられています。
場面は、かほよに一目惚れした高師直がその風呂上りを覗いているところです。高師直は、かほよに想いを伝えたものの玉砕。逆恨みした高師直が、かほよの夫・塩谷判官を罵倒しますが、逆に斬り付けられてしまう、そんな物語となっています。吉良上野介が浅野内匠頭の妻に惚れたといった事実はありませんが、物語の展開上、歌舞伎などにはよく色恋沙汰が取り入れられました。
本浮世絵を描いた「月岡芳年」(つきおかよしとし)は、幕末から明治時代初期に活躍した浮世絵師です。美人画や歴史絵、役者絵、風俗絵など多種多様な作品を手掛けました。
また「無惨絵」の描き手としても知られ「血まみれ芳年」といった異名も持ちます。本浮世絵「月百姿」(つきひゃくし)は、月にまつわる物語や故事をもとに100枚の揃物(そろいもの:シリーズ化して出版された浮世絵)として出版され、月岡芳年晩年の最高傑作との呼び声高い作品です。
