- 浮世絵
つきおかよしとし さく「つきひゃくし えんちゅうづき」 月岡芳年 作「月百姿 烟中月」 /ホームメイト

本浮世絵は、月岡芳年(つきおかよしとし)が、最晩年に8年の歳月を掛けて描いた大作、「月百姿」(つきひゃくし)シリーズの1枚です。
全100点の連作からなる月百姿は、月を題材に、日本や中国の伝承、歌舞伎や謡曲などが描かれています。
本浮世絵に描かれているのは、火消(ひけし)一番組・い組の「纏持ち」(まといもち:火消の役職)です。激しく燃え盛る炎の前に、冷静沈着に佇(たたず)んでいます。
江戸の消防組織である火消は、48組もの組織があり、それぞれの火消組のシンボルとして「纏」(まとい)という馬印(馬標)(うまじるし)のような物を用いました。
なかでも、本浮世絵に描かれている一番組・い組の「纏」は、最上部の球体が「芥子[けし]の実」、その下の直方体が「枡」(ます)を表していることから、「消します」と呼ばれたのです。この呼び名は、大岡越前(おおおかえちぜん)によるものであったという説もあります。
本浮世絵を描いた月岡芳年は、歌川国芳(うたがわくによし)の弟子で、幕末から明治に掛けて活躍し、「最後の浮世絵師」と呼ばれました。様々なジャンルの浮世絵に挑戦し、西洋画の要素を取り入れるなど、生涯において10,000点にもおよぶ作品を手掛けたと言われています。
■本浮世絵に描かれている月
纏の芥子の実と並んで、煙の向こうに、ぼんやりと満月が見えます。
球体を並べる構図や、朦朧とした月の表現が巧みです。
