「国際浮世絵学会」(こくさいうきよえがっかい)は、1998年(平成10年)に設立された研究連合体です。学術的・国際的な視野に立ち、日本が世界に誇る芸術文化である「浮世絵」の研究、保存、普及、浮世絵を通じた国際交流などを行っています。国際浮世絵学会の主要な活動は、春と秋に行われる大規模な学会の開催と、年2回の学会誌「浮世絵芸術」(うきよえげいじゅつ)の発行です。他にも、全国の浮世絵展などに合わせて、年に3回程度の研究会を開催するなど、積極的に浮世絵の普及活動を展開しています。
学習院大学
国際浮世絵学会の前身は、1921年(大正10年)に設立された「日本浮世絵協会」(にほんうきよえきょうかい)です。
日本における浮世絵の研究と保存を目的とした研究団体で、1962年(昭和37年)に機関誌「浮世絵芸術」を創刊し、それ以来日本における浮世絵研究をリードし続けてきました。
その後、国際化・情報化時代に対応できる研究機関を目指して、1998年(平成10年)11月、学習院大学(東京都豊島区)で国際浮世絵学会創立大会を開催し、現在の組織になったのです。
2005年(平成17年)には、学習院大学名誉教授で美術史学者の「小林忠」(こばやしただし)氏が理事長に就任。2007年(平成19年)11月、「国際浮世絵学会賞」を設け、浮世絵の研究において功績があった人物を顕彰しています。
国際浮世絵学会は、浮世絵が美術品であるだけでなく、多様な情報を伝えるメディアであるという視点で活動。浮世絵の研究者やコレクター、制作者、取引商、愛好家などの幅広い立場の人々とともに、研究・保存・普及・国際交流活動を行っています。
また、その研究活動領域は、浮世絵を軸として美術、国文学、歴史、民族、文化史、風俗史、演劇、建築、社会、宗教などの関連学問領域を広く網羅。研究成果は国内のみならず、世界に発信され、高く評価されています。こうして、現在も浮世絵に関する若い研究者や愛好家の育成を推進しているのです。
国際浮世絵学会の組織は、事務局と事務方である総務委員会・財務委員会、そして実際に浮世絵に関する各種活動を行う企画委員会・編集委員会・国際委員会から構成。学会の活動を担う企画・編集・国際の各委員会の活動について見てみましょう。
企画委員会では、国際浮世絵学会が主催する各種イベントの企画・運営を実施。現在は国際浮世絵学会(春季大会)と、年3回程度開催される研究会、その他展覧会などを担当しています。
編集委員会は、学会誌「浮世絵芸術」の編集・刊行を担当。「浮世絵芸術」は、1月と7月の年2回発行。
1962年(昭和37年)の発刊以来、通算号数が180を超える伝統ある学会誌で、毎号、浮世絵に関する専門家や研究者の論文、研究ノート、資料紹介の他、浮世絵の最新情報、技術の紹介、美術館・博物館案内といった内容が盛りだくさん。「浮世絵芸術」を定期的に手に入れたいからという理由で入会する人も増えているほど、充実した機関誌です。
国際委員会は、日本浮世絵協会から現在の国際浮世絵学会へと組織変更をした理由のひとつである、国際的な活動を担当する部門。主に、毎年開催される世界でも最大規模の浮世絵国際シンポジウム・国際浮世絵学会(秋季大会)を主催します。
年ごとに異なるメインテーマが決められ、国内外から多くの研究者や熱心な浮世絵ファンが一堂に会し、研究発表や特別講演などが行われます。これまでのメインテーマは「明治の浮世絵」、「鈴木春信」(すずきはるのぶ)、「歌川広重」(うたがわひろしげ)などです。
国際浮世絵学会の会員の総数は、海外会員を含めて約600名。会員の構成は、大学・美術館などに籍を置く本格的な浮世絵の研究者から、彫師・摺師(ほりし・すりし)などの浮世絵職人、浮世絵のコレクター、美術商、画家、市井の浮世絵ファンまで様々。そのため、多様な視点から浮世絵に触れる機会となり、毎年活発な情報交換が行われています。
国際浮世絵学会の会員になるために、特別な資格は必要ありません。浮世絵に熱意と興味があれば、どんな人でも入会可能です。
入会費用は、一般会員が入会金2,000円・年会費10,000円、維持会員が入会金不要・年会費1口30,000円以上、賛助会員が入会金不要・年会費1口100,000円以上となっています。会員特典は、次の通りです。
日本浮世絵博物館