- 妖怪浮世絵
つきおかよしとし さく「しんけいさんじゅうろっかいせん みいでららいごうあじゃりあくねんねずみとへんずるず」 月岡芳年 作「新形三十六怪撰 三井寺頼豪阿闍梨悪念鼠と変ずる図」 /ホームメイト

本妖怪浮世絵は、「月岡芳年」(つきおかよしとし)の晩年から没後に発表された、妖怪をテーマにした浮世絵シリーズ「新形三十六怪撰」(しんけいさんじゅうろっかいせん)の1枚。平安時代後期の僧「頼豪」(らいごう)にまつわる化け鼠(ばけねずみ)伝説を扱ったものです。
三井寺(園城寺)の僧である頼豪は、第72代天皇「白河天皇」(しらかわてんのう)の皇子誕生を祈祷し、その通りに「敦文親王」(あつふみしんのう)が生まれます。頼豪は見返りとして三井寺に戒壇(かいだん:正式な僧の資格を認める場所)を設置するよう朝廷に求めますが、三井寺と対立する延暦寺から妨害されて実現しませんでした。
これを恨んだ頼豪は敦文親王に呪いをかけ、断食して死去。呪われた敦文親王は病により4歳で亡くなりますが、頼豪の怨霊はさらに巨大な鼠の姿で延暦寺にも現れ、経典を食い破るなどしたため、呪いを恐れた延暦寺の僧が神社に頼豪をまつることで、ようやく鎮まったのです。
本妖怪浮世絵は、顔や身体が鼠に変わりつつある頼豪が、鼠とともに経典を食い散らす様を描きますが、画面の縁もボロボロの虫食い状になっており、表現が重なり合います。新形三十六怪撰の作品の縁はすべて虫食いでそろえられていますが、これは精神に病を抱えていた月岡芳年が見た幻覚を表しているとの説が唱えられています。
